ザ・ミッシング ~消えた少年~ の複雑怪奇な感想を

英国ドラマ「ザ・ミッシング~消えた少年~(原題:THE MISSING)」(2014年)全8話を見終えました。
続編「ザ・ミッシング~囚われた少女~」(2016年)の放映が決まり、未見だったので重い腰を上げて見ることにしました。
ちなみに、タイトルに個々でサブタイトルが付いているため短編のシリーズものと思われがちですが、実際は「消えた少年」がシーズン1、「囚われた少女」がシーズン2とカウントされた連続ドラマ扱いのようです。
英国ドラマは間隔を空けることがあり、需要があれば続編が作られます。「THE MISSING」はそのパターンだと思われます。
今回「囚われた少女」放映前の一挙放送だったので、モヤモヤせずに見ることができました。

さて「ザ・ミッシング~消えた少年~」の感想を書き残したいと思います。
吹替え声をチェックしながらだったので、ものすごい長文になっていて書き終えたら「長すぎ…」が自分の感想でした。
1話ずつ感想を書くのも記事を増やす手ではありますが、一挙放送の編成ですし時間軸が移動する構成のドラマのため飛ばし読みは難しいと思い、まとめることにしました。
声メモはこちらからどうぞ。

トニー・ヒューズ(ジェームズ・ネスビット):遠藤大智 エミリー・ヒューズ(フランシス・オコナー):藤本喜久子 …
2017/05/25追記:あらすじについては本記事とかぶる部分も多く、また自分で構成して書いたものだとしてもあらすじの領域を超えていたため記事を削除しました。

消えた少年は、もう戻らない

物語はごくシンプルなのですが、過去と現在を交差させることで情報をかく乱させ、突如真実が浮かび上がってくる構造になっています。
1人の少年がフランスの小さな市で行方不明になります。
何年もかけて捜査されますが、報道陣の過熱や父親の過激な行動が街に住む人々を不審がらせ、ある事件がきっかけで捜査が中止になります。
8年経った現在(2014年)、再び父親はその市に現れたところから再び事件の時間が動き始めます。
現れたのは当時担当刑事だった元刑事とその元部下、もうすぐ家族になる行方不明の少年の母親と当時イギリスの担当刑事。
さらに事件で疑われた人物から意外な人物まで浮かび上がらせて、事件は悲しい真実が明らかになり結末を迎えます。

今思えば、と思うヒントが隠されていますね。
逆戻しに考えると納得するなぁと思えるシーンやアイテムが多い。
最初にホテル・エデンの女店主シルビーから送られた写真に、行方不明少年オリヴァーが使っていたタオルをまとう人物が写っていたところ。
オリヴァーが使っていたタオルを知っていた人物は、トニー、エミリー・ヒューズ夫妻とシルビー、そしてシルビーの夫アランだけ。
アドベンチャー・ゲームなら「タオルの情報を手に入れた!」ですが、シルビーはうすうす感づいていたのかもしれない。
オリヴァーが消えた当日、夫アランが「タオルを渡しに行ってくる」とトニーとオリヴァーが出かけた後を追いかけている。
そして禁酒中のアランが集めている禁酒コインを大事にしているシルビーが、2006年だけなくなっていることに気づいていないはずがない。
いつトニーが現れても「ホテル代はいらない」といつも優しく接してくれるのも、夫のことを隠すための罪悪感からとも考えられます。
もしかすると断腸の思いで写真をトニーへ送り、シャロン・デュ・ボアへ訪れさせてホテル・エデンにも泊まらせた。
夫の命が尽きるのもわずかと知っている彼女は、せめて贖罪だけでも…と思ったのかも。
最後にトニーはアランの真実をシルビーに告げずに去っているが、そう思えばシルビーのほうが『女優』だったかもしれない。

次に『俳優』だったのは、事件当時予審判事で現在シャロン・デュ・ボア市長のジョルジュ・ドゥロワではないだろうか。
彼の人脈がただならぬというか、街の小ささ故に犯罪者から実力者、そして弟アランまで操っていること。
第8話でアランがジョルジュの弟だったという事実が明らかになって「(脚本家め!して)やられた!」と思いました。
第1話から第7話まで彼らが連絡を取り合うというシーンは存在しないし、接点といえば名字だけで気づかなかった。
アランは、それまでホテル・エデンの女店主シルビーの夫という立ち位置でしかなく、結末編である第8話でようやく判明する狡猾さ。
そのアランが犯した罪を仕方なく尻ぬぐいする兄ジョルジュ。
始末屋と掃除人との繋がりを持つジョルジュだが、取り逃がしていた可能性が高い。
実はアランが犯した行為は未遂で済んだはずだったが、すでに始末屋に処分されていた。
変わり果てた(はず)オリヴァーの姿を見たのはジョルジュだけ。
始末屋と掃除人によって『消去される出来事』だが、弟を殺人者にしてしまったのに変わりない。
だからこそ、これ以上のミスは今まで築き上げた栄誉や実績を汚してしまう。
すでに彼の手は紅く染まっていると思うが、ジョルジュ視点から見れば再びトニーが現れ再捜査が始まらなければ、何事もなく日常が続くはずだった。
彼の苦悶は、トニーとエミリーのオリヴァー失踪公開捜査会見の時から始まっていた。
捜査中止になった時点で忘れられていくはずだったのだが、逆に真実が明るみになり追われる身になってしまう。
ジョルジュは、オリヴァーの遺体先を告げず自死を選んだ。
もしかすると、トニーへの『呪い』かもしれない。

容疑者は、何も言わない

オリヴァー事件には、容疑者として上がるもしくは疑惑が持たれた人物が登場しストーリー展開を混乱させられました。
一人は2006年当時に前科のある小児性愛者の青年ヴィンセント・ブーク。
もう一人は、オリヴァー捜索に懸賞金をかけた建築業者で実力者のイアン・ギャレット。
二人の共通点は、小児性愛者だということ。
トニーは毎日ヴィンセントを監視していたほどだったが、基本は気が小さく迷惑をかけたくない気持ちがありながらも性癖に嘘は付けずにいる。
イアン・ギャレットとは『共通点』で繋がりがあった。
ヴィンセントは、イアンと児童虐待動画の共有をする代わりに表に出すなら母を殺すと脅されていた。
オリヴァーの事件でヴィンセントに疑いがかかった途端、「これからは、俺たちの関係は何もない」とイアンに言われる。
その後ヴィンセントはイギリスに移住し、ファストフード店で働きながら薬を服用し均衡を保っていた。
だが、子どもを見ると衝動が抑えられずに戦っている。
いろいろな薬や治験を試し、一定期間気分が良くなったヴィンセントはフランスのリースに戻ってくる。
イアンの元へ会いに行ったが、彼は8年前に行方不明になり1年前に死亡認定を受けていた。
脅迫におびえていたイアンがいなくなったせいか、何かのタガが外れたように薬が拒否反応を示し、セラピー集会にも出席するが拒否してしまう。
前科者だっただけで容疑者にされ、釈放されてもトニーに監視されイアンに脅迫もされ、心が耐えられなかった彼はイギリスへ行くことで再出発を始めた。
本当の安穏はこれからだったはず。
しかし、たった一人で住み、医師は薬を与えてくれるがそれだけで、彼を救ってくれる存在がいなかった。
ヴィンセントはいつものように食事をした後、『殻』から脱皮できずに首つり自殺する。
今思うと、イアンからの『負の連鎖』で小児性愛者になった可能性もあるかもしれない、と思ってしまった(L&O:SVUの影響だなぁ)。

そのイアンは、善意でオリヴァーの懸賞金を出した建設業者兼修復業を経営している人物である。
異様な性癖を持ち『あること』を妻メアリーに口封じさせ、ヴィンセントを脅していることを除けば。
イアンは実力者だったから、ジョルジュ・ドゥロワと繋がりがあった。
最悪な状況が起きそうな場合、先回りしてジョルジュに頼み事をし、策を労していたのだろう。
トニーがヴィンセントに暴力を起こした後、逮捕されたときもそうだった。
だがそれは隙を与えるきっかけを作った。
トニーの代わりに妻エミリーがメアリーの元に訪れたときの出来事。
『何もなかった』かのように必死に隠す妻メアリーの動揺。
イアンが犯した娘モリーを含む、複数の子どもへの性的虐待と殺害。
小型船舶の中に大量の動画ビデオを発見したトニーは、イアンを糾弾する。
言い訳を続けるイアンがオリヴァーとは関係なかったことを気づいたトニーは、憤怒の末イアンを殴り殺してしまう。
小型船舶とともにイアンを海面へ流す。
二人とも罪悪感にさいなまれながらも罪を犯し、それを隠蔽していた(ジョルジュ・ドゥロワが関与している可能性も高い)。
だがそれぞれ『死』という結末を迎える。
ヴィンセントは自死を、イアンはトニーから殺害を。
死人に口なし。
事件に絡まりながらも彼らは傷をつけて消えていった。

新たに進む、女たち

オリヴァー失踪事件を軸にして変わっていった女性が、物語にアクセントを付けています。
一人目はオリヴァーの母エミリー。
オリヴァーがいなくなったことで心が壊れかけたところまで行きかけた。
それを救ったイギリス側の担当刑事のマークとその息子ジェイムス、また彼女を支えた友人たちによって前に進もうと頑張っている。
そのマークでさえ、失踪事件の被害者だったエミリーと関係を結ぼうとしていることに引け目を感じて刑事を辞めようとしていた。
それを止めたのはもちろんエミリーだろう。
トニーとの関係はオリヴァーがいなくなり、トニーがオリヴァー失踪に重きを置き過ぎたが故にギスギスしていき、破綻して離婚した。
再捜査を聞きつけ、再会した二人。
初めはオリヴァーの事件にこだわりすぎるトニーに憤り、マークとの婚約を皮肉る彼を苦々しく思っていた。
物語が進むにつれ、傷つきながらもオリヴァーのために生き続けるトニーに対して、憐憫の感情が少しずつ湧き上がっていく。
ある日、ジェイムスがスポーツ中に怪我を負い入院する。
その際、ジェイムスが求めたのはエミリーではなく実母だった。
病室で久々の家族団らんで包まれるのを外から見るしかなかったエミリー。
実母を超えることなどできないことはわかっていたが、その場で突き付けられると消えた息子オリヴァーのことが思い出されてシャロン・デュ・ボアへ赴く。
少しずつ事件が前進していたことや、失踪時監禁されていたとされる地下室を掃除した男に会ったりトニーたちと行動する中で、トニーへの感情が思慕とまでは行かないが共通する『何か(オリヴァーのこと)』を持つ同志として心を寄せられるようになっていた。
今後も付き合っていけると思えたのか、真実が明らかになった後にエミリーはマークと結婚式を挙げるがトニーも出席者として呼んでいる。
「決して諦めないこと」と、マークを始め(無論トニーも含まれているだろう)友人たちに対して、前に進むことができることに感謝している。

二人目は、オリヴァー失踪事件の中で、関連事件に潜入捜査していたジュリアン・バティストの部下の恋人だった女性リニではないか。
バティストの部下アントアンは、“リオン”という名で犯罪組織に潜入していた。
組織の人物の妹リニと恋愛関係に発展していたアントアンは、ジュリアンの元に秘密情報が手に入ったと伝える。
バティストは彼と駅で会う約束をしていたが、アントアンは殺害されていた。
口封じで殺害されたと察したジュリアンは、恋人リニを確保しアントアンが持っていた情報を手に入れようとする。
リニは薬物中毒者で、アントアンも薬物に染まり始めていた。
恋人が死に悲しむリニの条件は、薬物を抜いて己を助けること。
ジュリアンは驚くこともなくそれに応え、交換条件に兄から情報を引き出させることに応じさせる。
苦しみに耐えながら根気よくジュリアンと戦い、薬物から逃れた彼女は、名前を変え、居場所も職業も変えた。
恋人もでき、幸せな生活を送っていた矢先、再びジュリアンから連絡をもらい、もう一度潜入捜査の協力を要求される。
同意はしたが、恐怖から逃れたい気持ちから一度目の潜入は失敗に終わる。
実は8年前の潜入捜査時に兄の側にいた男に殺されかけていた。
喉元に残る傷はその記憶を呼び起こした。
だが、万全の体制で行うとジュリアンが約束したため、もう一度兄に会いに行くことにする。
兄に襲い掛かったリニは、「カール・ジーグはどこにいるか」と降りかかる過去の感情に圧されるように暴走する。
兄は白状しすべては終わった。
リニは、消し去ることのできない傷を負いながらも、懸命に前を向いて生きようとしている。

最後に、ジュリアンの娘も該当するかもしれない。
ジュリアン・バティストには妻セリアとの間に娘がいるが、娘が薬物中毒者で金をせびり母親に暴力したりやりたい放題だった。
ジュリアンは娘が薬物に染まると、自力で薬物を抜くことを何度も実践していた。
だからリニの時に、実行へ移すことにためらいがなかった。
ジュリアンの妻セリアは、未だに娘とどう接すればいいのかわからず嘆き悲しむ。
ジュリアンは、そんなセリアに寄り添うことしかできなかった。
オリヴァー事件の真実が明らかになった後、トニーからイギリスにある薬物更生施設を紹介される。
娘はその施設の入居を承諾し数年が過ぎる。
バティスト夫妻が施設に訪れると、娘はセラピーを真面目に受けて更生し始めていることを喜び家族で抱き合っている。
どんな形であれ「決して諦めないこと」という言葉が実を結ぶ瞬間は、闇に照らされた事件だったとしても福音なのかもしれない。

罪を犯した、男たち

オリヴァー事件の犯人は、アラン・デュロワだと言えばそれまでだが、事実は飲酒運転時の交通事故過失未遂兼証拠隠滅罪であり、車ごと地下室のある女の家に運んだ後、しばらくしてオリヴァーは蘇生していた。
もし、アランがいた時にオリヴァーの息が戻っていたら、気の小さいアランのことだから助けたかもしれない。
そして、このわずかな時間の中で向かいの家の録画ビデオにオリヴァーが映りこんでいた。
もう1カット、カール・ジーグの清掃会社のバンが映っていたのも奇跡に近い。
「もしかしたら助かったかも」という言葉は、淡い粒のようなもの。
ほんの数時間で一人の子どもの運命が変わってしまったのはとても痛ましい。
子どもの小さな命を絶ったのは始末人のルーマニア人で、血に染まった地下室を掃除したのがカール・ジーグ。
もちろん「始末しろ」と連絡したのはアランの兄ジョルジュで、まさかオリヴァーが生き返っていたことを知り驚きを隠せなかったが、もし生きていたのなら生命維持が大事と考えるのが普通の人間の考え。
だが、ルーマニア人は冷静に「処置」していた。
「処置」の姿は見たのはジョルジュだけ。
さらにジョルジュはオリヴァーの遺体について一切語らず自殺している。

まさか、人身売買?という小さなフラグが、事件が起きた頃にちらりと出ていた。
もちろんそれは嘘情報だったが、そう願ったかもしれない、罪を犯し赦されながらも命をオリヴァー探索に捧げた男がいた。
そう、オリヴァーの父親トニー・ヒューズだ。
彼は、オリヴァー事件以前に暴力事件を起こし、当時妻だったエミリーの父親が弁護士だったこともあり事件をもみ消していた過去があった。
暴力性を秘めていることを除けば、トニーはごく普通に家族を愛し、愛する家族のために働き、何事も起こらず平穏な生活を送っていた。
フランス旅行も家族サービスの一環だった。
フランスがサッカー観戦で盛り上がっており、シャロン・デュ・ボアも湧き上がっていた。
トニーたちにとっては家族で楽しむことが重要であり、サッカー観戦など二の次。
ある日、トニーとオリヴァーが近隣のプールへ遊びに行くことになった。
二人は手に手を取って歩いていたが、テレビが置かれたドリンクスタンドにトニーが踏み込んだことからオリヴァーと手が離れてしまう。
オリヴァーはその場からいなくなってしまい、見つけたキツネを追いかけて道路に出るが…。
オリヴァーがいなくなったことを気づいたトニーは動揺し慟哭する。
以来、トニーはオリヴァーの行方だけで心がいっぱいになってしまう。
容疑者扱いにしたヴィンセントの心を壊し、イアンは殴り殺しまでした。
ジュリアンやマークにイアン殺害の事実を知られながらも、その罪を逃れている。
彼がオリヴァーという『檻』の中に囚われたままで、刑務所の中にいるようなものだと知っているからだ。
オリヴァーを轢いてしまったアランから真実を聞いたトニーは、オリヴァーの遺体を見ていない故に憤りを感じていた。
その感情はやがて『オリヴァー遺体探索』から『オリヴァー探索』にすり替わり、いろいろな子どもを見てはオリヴァーだと思い、子どもを近づく不審者へと変わり果ててしまう。
トニーの幸せは、オリヴァーが見つかること。
だからこそ、ずっと彼を探し続けるのだ。
誰も彼を止められない。
それは警察であっても、恐らくエミリーやジュリアンであっても。
初めにトニーが手を離したことから始まった事件だ。
すべての罪を被ってしまったように、雪が降り積もるロシアで今日もトニーはオリヴァーを探し続けている。

まとめ

全8話で第8話に真実が明らかになるというちょっとどうかなぁという展開だったといえばそれまでですが、エミリーたちが幸せになる中でトニーだけが取り残されて、本当に悲しい結末でした。

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